本研究は,16-17世紀における社会統合の実態と特徴を,士族と呼ばれる中小勤務人層の,社会的・政治的活動をとおして解明しようとする試みであった。平成24年度の目標は,研究計画の最終年度として,かれらの政治的・軍事的な活動に主に焦点を当て,その研究史を整理するとともに,西欧の軍事史とも比較しながら,かれらの果たした歴史的な役割とその意義を考察しようとするものであった。その成果は以下のようなものとなった。 1.研究期間の2年間で収集した諸文献をもとに,士族層を中心とした軍事史に関する研究史の整理を行った。これはすでに入稿済みであり,共著として,平成25年度に刊行される予定である。 2.資料訳読の研究会に,24年度も参加した。訳読している資料は,17世紀初頭の動乱時代に関連する基本資料「パーリツィンの回想録」であり,相互の討論とも相まって,本研究に裨益するところが大きかった。これは,次年度以降にも継続される。 3.24年度も,「軍隊と社会の歴史研究会」に参加し,世界各地域・各時代の政治・社会・軍事の問題について,多くを学んだ。 4.過年度から順次進めていた翻訳『戦闘技術の歴史』の監修作業が,「ナポレオンの戦争編」で,全3巻すべて完結した。刊行は25年4月になったが,実質的には昨年度の成果である。 5.またこれらの諸研究から派生して,日本人の戦争体験,戦争認識について考察した小論を,24年度の初めに,共著として刊行した。
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