研究課題/領域番号 |
22520732
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
山崎 彰 山形大学, 人文学部, 教授 (30191258)
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キーワード | マルク経済協会 / ブランデンブルク / ロッホウ / 農村結社 |
研究概要 |
本年度は、次の2点に研究計画の中心があった。 (1)ブランデンブルク大聖堂文書室の調査 2011年9月にブランデンブルク大聖堂文書室で調査を行った。文書室にはマルク経済協会の資料が所蔵されているわけではないが、ロッホウ家(協会会長)の領地周辺の地域事情に関する資料が多く、機関誌で採り上げられている諸問題を理解するために貴重な資料を数編発見し、分析した。 (2)「マルク経済協会」刊行の機関誌の調査 2011年9月にベルリン自由大学図書館においてマルク経済協会の刊行した「マルク経済協会誌」「公益的民衆誌」の2つの機関誌の調査を行い、これらを複写し、また帰国後、記事、評論の分析を行った。 機関誌掲載の評論の分析を進めるとともに、ドイツ語圏の他の経済協会や郷土協会との比較を行う中で、以下のような問題を発見した。これらの協会がしばしば強調する「公益」Gemeinwohl,Gemeinnutzigkeitの内容は、「農業=産業」間での多様な補完関係の形成を通じた地域経済の発展であり、その担い手の育成であること、「公益」概念と「郷土愛」Patriotismusの間には密接な関係があることである。いわば概念史的な検討が、今後必要になる。 経済協会は、宮廷=重商主義国家から市民社会=経済社会が自立しつつある時代に、後者の利害を代表する機関として位置づけることが可能であるが、マルク経済協会に結集した貴族や市民は、地域の内部循環型の経済成長を志していたことが確認できたことは、重商主義政策やその後のプロイセン経済政策との比較の意味でも、重要な成果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、史料として重視していたマルク経済協会関係文書は、ブランデンブルク州立文書館にはあまり多く所蔵されていなかった。しかし今ひとつの重要史料である協会の機関誌は、多くの有益な評論や記事が掲載され、これらについては複写と分析をほぼ終えている。
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今後の研究の推進方策 |
マルク経済協会文書が乏しいものであったので、それにかわる史料としてプロイセン内務省関係の文書が利用可能かもしれない。これらには、19世紀前半の地域の結社の活動についての報告が収集されている可能性がある。今年度は、これらについて調査を予定している。
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