本年の研究実績は2つに大別される. 第1点目は,夏期休業期間中に行った4週間の調査旅行であった.この調査旅行では「ハンブルク・ハールブルク工科大学建設によって影響を被る市民の会」に関する資料収集を引き続き行った.本研究は,研究の目的にも記されるように,メディア(史)研究の側面における寄与も念頭に置いている.そこで,上記の市民運動に関して継続的に報道を行っていた,die Welt Tageszeitung,Bildなどの全国紙からHamburger Abendblattなどの全ハンブルクレベルの地方紙,Harburger Wochenblattなどの州内の区レベルを対象とした新聞を引き続き閲覧した.こうしたメディア報道を利用することによって,公共圏形成においてメディアの果たす役割に関する分析が可能であると考えている.現在これらの分析・検討中である. 第2点目は,研究のタイムスパンを若干拡大し,「新しい社会運動」がその成立期より変化を遂げながら,現在いかなる形態として具現化しているのかという関心から新たな事例研究を行った.具体的にはエネルギー問題を関心の中心において活動するユーンデ村をとりあげ,昨年発表した「バイオエネルギー村ユーンデ 生活環境再編に向けた討議民主主義の可能性」を発展させるべく,プロジェクトに住民コンセンサス形成の側面において中心的な役割を果たしたゲッティンゲン大学の研究者や住民に聞き取りを行った.
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