研究概要 |
本研究は,第一次世界大戦後のドイツ・中欧地域において国民国家体制が再編されることによって生み出されたマイノリティ問題の展開をたどり,この問題が第二次世界大戦末から戦後にかけてこの地域の住民移動・追放に帰着したことを歴史的に明らかにしようとするものである。マイノリティ問題はこの時期,国内政治と国際政治が交錯する一大争点となり,第二次世界大戦から戦後にかけてのこの地域の国民国家体制にきわめて大きな意味をもったにもかかわらず,わが国ではその方面の研究はまだ緒についたばかりである。この過程をドイツ・中欧地域の相互関係史の問題として歴史的に問い直すことが,本研究の最大の目的である。 本年度は,この問題に関わる研究を引き続き収集・整理するとともに,ドイツ(ベルリン),チェコ共和国(プラハ,プルゼニ,ブルノ),スロヴァキア(ブラティスラヴァ),およびエストニア(タリン),ラトヴィア(リガ),フィンランド(ヘルシンキ)などの図書館・文書館・博物館で関係する資史料を収集・分析することを継続した。とくに,1933年から1939年までヒトラー政権下のマイノリティ政策,ドイツ系マイノリティの団体とそれを扱う部署の再編を,チェコスロヴァキア,ポーランド,バルト諸国の対応する政策と比較対照した(バルト諸国はポーランドの政策を検討する上で付け加えた)。 以上の点については,今後も多元的な検討・分析が不可欠であり,そのための第一次史料の収集はまだ不十分なので,来年度も引き続き史料の収集と検討を進めていくつもりである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この2年間に集めた資史料の収集・分析によって,ドイツとポーランド,チェコスロヴァキア,バルト諸国とでマイノリティ問題の相互関係が異なることが明らかとなり,その点の検証をこれから進めていく目安がついたため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの蓄積をふまえて,本研究に関わる資・史料をドイツ,ポーランド,チェコスロヴァキアの図書館・文書館で収集し分析する作業を継続するとともに,その成果を論文の形で発表する。ポーランド,チェコスロヴァキアに加え,バルト諸国を比較対象に付け加えることによって,戦間期から第二次世界大戦~戦後にかけてのマイノリティ問題の相互関係の帰趨を明らかにする予定である。
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