本研究は,第一次世界大戦後のドイツ・中欧地域において国民国家体制が再編されることによって生み出されたマイノリティ問題の展開をたどり,この問題が第二次世界大戦末から戦後にかけてこの地域の住民移動・追放に帰着したことを歴史的に明らかにしようとするものである。マイノリティ問題はこの時期,国内政治と国際政治が交錯する一大争点となり,第二次世界大戦から戦後にかけてのこの地域の国民国家体制にきわめて大きな意味をもったにもかかわらず,わが国ではその方面の研究はまだ緒についたばかりである。この過程をドイツ・中欧地域の相互関係史の問題として歴史的に問い直すことが,本研究の最大の目的である。 本年度は,この問題に関わる研究を引き続き収集・整理するとともに,本研究に関わる資・史料をドイツ,ポーランド,チェコスロヴァキアの図書館・文書館で関係する資史料を収集・分析することを継続した。とくに,第二次世界大戦中から戦後にかけて占領地域でヒトラーが行ったゲルマン化政策,ユダヤ系やスラヴ系の追放・虐殺政策,それに対するポーランドやチェコスロヴァキアの抵抗運動・亡命政府の戦後ドイツ人追放構想を,イギリスと他の連合国の戦後ドイツ・中欧地域再編政策と関連させ,多角的・重層的に明らかにしようと努めた。
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