研究課題/領域番号 |
22520741
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
梶川 伸一 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (50194733)
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キーワード | ネップ / チェー・カー / 大飢饉 / 教会弾圧 |
研究概要 |
本年度は22年3月から本格的にはじまる教会貴重品収用キャンペーンと大飢饉との関連と、それに関してボリシェヴィキ権力の支配構造の変化について、研究、調査を行った。これまでは政策決定過程で重要な意味を持つ「社会政治史国家アーカイヴ」を中心に資料調査を行ってきたが、本年度は、それに加えて、教会弾圧に関する司法人民委員部の資料が保管されている、「連邦国家アーカイヴ」キエフスカヤ分館での調査を行った。このアーカイヴにある司法人民委員部資料は、日本人研究者にとって未見であり、この資料調査により教会弾圧の政策決定過程がより正確に理解できることとなった。その成果の一部は、下記に記した論文集所収の論考として公表される。そこでの研究成果は、日本のこれまでほとんど未開拓であったレーニン時代における教会弾圧に関する研究水準を、ようやくロシア学界の水準にまで到達させたことになるとの意味を持つ。 この政策での推進者はトロツキーであり、党中央委の政策が非公然として位置づけられたトロツキー特別委員会によって既決された方針の承認であることを、そこで明らかにし、レーニン時代の晩年に政治構造が、教会弾圧政策を通して変容したことを論証した。レーニン時代の支配体制を包括する著書の刊行を予定しているが、この研究はその著書で重要な位置を占める。 また、4月に史学研究会例会で『ボリシェヴィキ権力と21/22年飢饉』の報告を行い、それは、飢饉とネップへの移行を関連づけたことで、このテーマにとっての意味を持つ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の資料調査は、ほぼ予定通りに行われ、これまで収集した資料と合わせて、著書の執筆に向けての具体的歴史的検討と叙述を行うための資料調査は基本的に終了したと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後はこれまでの欧米を中心とした同様の研究史と本研究との比較研究を行い、自分の研究成果の相対的意味を検討する。そのためには、イギリスを中心とした欧米でのソヴヱト=ロシア史の研究史を纏める必要がある。それらの成果を踏まえて、レーニン時代の支配構造に関する包括的著作を執筆する予定である。それはこれまで公刊してきた十月蜂起からネップへの移行に関する著作三部作を、「赤色テロル」による民衆支配の概念によって再構成することになる。
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