研究課題/領域番号 |
22520743
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
澤田 典子 静岡大学, 人文学部, 准教授 (50311650)
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キーワード | マケドニア / ギリシア / エスニック・アイデンティティ / ヴェルギナ / ペラ |
研究概要 |
今年度は、古典期のマケドニア人のエスニック・アイデンティティのあり方を考察することによってマケドニア王国の興隆の背景に迫るという研究目的のため、まず、昨年度に引き続き、マケドニア人とギリシア人の相互認識に関する同時代の古典史料の分析に取り組んだ。ヘロドトス・トゥキュディデス・エウリピデス・トラシュマコス・イソクラテス・デモステネスなどの同時代の著作家たちの記述について、昨年度に考察した彼らの立場や価値観、およびそれぞれの記事の文献学的先行研究を踏まえて検討し、マケドニア人とギリシア人の微妙かつ曖昧な相互認識のあり方を明らかにした。さらに、前5~4世紀のマケドニアの言語と文化に関する文献史料・考古資料の調査・分析にも取り組んだ。前5世紀のマケドニアの言語・文化の解明につながる史資料は前4世紀に比べてかなり乏しいが、ヴェルギナ・ペラ・エアニなどをはじめとするマケドニア地方の発掘調査は、とりわけ21世紀に入ってから著しい進展を見せている。そうした最新の豊かな考古学的成果から、ギリシア文化の積極的な受容を図ったことが知られる前5世紀末のアルケラオスの治世以前より、ギリシア語およびギリシア文化がマケドニア社会の上層部にかなり浸透していたことを検証した。そのうえで、マケドニアとギリシアの言語・文化の同質性・異質性が、古典史料から分析したマケドニア人・ギリシア人の相互認識にいかに反映されているのか、という問題の考察にも着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の交付申請書に記した3つの課題(相互認識に関する古典史料の分析、マケドニアの言語・文化に関する史資料の分析、言語・文化の同質性・異質性と相互認識との関連)すべてについて取り組み、一定の成果をあげることができた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である来年度は、今年度に引き続き、マケドニアとギリシアの言語・文化の同質性・異質性と、古典史料から分析したマケドニア人・ギリシア人の相互認識との「ズレ」について考察する。それによって彼らの相互認識のあり方をきめ細かく検証したうえで、そうした相互認識がフィリポス2世のギリシア征服の進展においてどのように作用したのかを解明し、エスニック・アイデンティティという側面からマケドニアの台頭について多面的に考察することが課題となる。
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