研究課題/領域番号 |
22520746
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
安野 正明 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 教授 (80202365)
|
キーワード | 亡命 / 社会主義 / カトリック |
研究概要 |
戦後ドイツ(西ドイツ)に帰還した亡命社会主義者として、ドイツ社会民主党のヴィリ・ブラントを中心に研究を続けている。昨年度はノルウェー亡命時代を中心に分析をしたが、平成23年度は1960年代から1970年代にかけて戦後ドイツが「第二の建国期」と呼ばれる大きな転換期であり、またブラントが首相になるのが(ドイツ社会民主党が戦後初めての政権交代をなし遂げるのが)1969年なので、この前後に特に焦点を合わせ「亡命者首相の誕生」という原稿を執筆している。まだ活字になってはいないが、この二年間の研究で1945年以前に関する「ノルウェー亡命時代のブラント」、そして戦後に関して「亡命者首相の誕生」がほぼ完成しており、ブラントの歩みを軸にして「ドイツ現代史における1945年の断絶」を克服するための研究が進行中で、まとめる目処は立っている。 また、この二年間はブラントという政治家を中心に研究してきたが、本研究はブラントの個人研究に止まるものではなく、ブラントのような「有名人」だけでなく、「無名の亡命者」とその戦後にも注目して研究することを目的としている。亡命時代に彼と同志的な立場から交流があったが戦後は別々の道を歩んだ社会主義者(例えば戦後は東ドイツで生きることを選んだヤコブ・ヴァルヒャー)や異なる亡命地で過ごした人々から数名をピックアップして史料収集を行った。これらの「無名の亡命者」については文献資料はかなり集めたので、本格的な分析は来年度以降に行う予定である。 亡命社会主義者と並ぶ研究の柱であるカトリック関係については、キーパースンとしてイエズス会士のオズヴァルト・フォン・ネルーブロイニングに注目して史料収集を行い、社会民主党との接点となる事例研究の選定と概要の分析までは終えた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4年間の研究の折り返し地点にあるが、課題の二本柱である「亡命社会主義者」と「カトリック」のうち、前者については先行して研究が進んでいる。この点については(1)であるが、後者については史料収集は進んでいるものの、読み込んでの詳細な分析は3年目の課題となると思われるので、総合的には(2)である。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画の通り遂行する予定であり、当初計画を変更しなければならないような問題は生じていない。自覚すべき留意点は、来年度は「カトリック」の方に力を注がなければいけないという点である。幸い、来年度前半はサバティカル研修をいただいてドイツに行けるので、研究の進展を期したい。 実証的な歴史研究はまとめるのに時間がかかり、平成23年度中に活字になった成果はなかったが、来年度は確実に形にできる。
|