研究概要 |
2013年度は、コルビー修道院長アダラールが作成した指令書の内容分析を進めるとともに、フランス国立図書館に出張して同史料の写本を実見した。またカロリング期エリートと社会変革をめぐる研究動向調査の一環として、Valentina Toneatto, Les Banquiers du Seigneur. Eveques et moines face a la richesse (IVe-debut IXe siecle), Rennes, 2012の検討を行い、アダラール指令書の文言分析にあたっては宗教的コンテクストへの目配りが重要であることをあらためて確認した。 これらの成果をもとに、Relire un document monastique dans les contextes sociaux. Les statuts d'Adalhard de Corbie de l'an 822(社会的コンテクストから修道院ドキュメントを読みなおす。コルビー修道院・アダラール指令書)と題するフランス語論文を作成し、現在フランス語を母語とする専門家に校閲を依頼しているところである。その論文においては、アダラール指令書のテクストが聖書の言説(最後の審判、神による適切な財の配分、など)が修道院において具体化されることをめざして布置されていたこと、しかし同時にそれは所領経営の「合理性追求」に資するものとなっていたことを指摘した。 論文作成の過程で、従来から指摘されてきた修道院経済の合理性を霊的コンテクストからも再検討することの必要性がますます明らかになってきたといえる。
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