カロリング期の社会変革を主導した教会・宮廷エリートによる統治実践のあり方を,コルビー修道院長アダルハルドゥスの作成した指令集を主な素材として検討した。教会組織の組織運営における宗教的コンテクストの重要性を指摘する近年の研究動向に沿ってテクスト分析を進めた結果、このテクストの相当部分が終末における最後の審判や神の無謬性などのキリスト教の言説を下敷きとしていること、またローマ法に起源を持つ、善良なる管理者の注意義務と義務遂行を証拠立てる帳簿類の作成・保管義務が修道院長、ひいてはカロリング期エリートの行動を規定する根本的要因の1つとなっていたとの認識を得ることができた。
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