研究実施計画に基づき、とりわけ「フランスの第二次世界大戦期における子どものあり方と子ども像」というテーマで研究を行った。その結果、(1)ドイツ占領下における子どもたちの日常生活、(2)レジスタンスをはじめ抵抗組織の側にたった青少年の実像と英雄化の過程、(3)ユダヤ系の子どもたちが強制収容所へ移送された経緯の解明とそのことが意味するもの、また、匿われることで生き延びた子どもたちの状況、(4)ドイツ兵とフランス女性との間に生まれた「ボッシュの子」の戦後、という4点について研究の状況や問題の所在を明らかにした。 (1)ではおもに、イラストレーターのジャン=ルイ・ベッソンが残した回想録を手がかりに、「占領期」がフランスの「普通の」子どもにとってどんな日々だったかを解明した。(2)ではとりわけ「レジスタンスの青年英雄」として知られるギィ・モケに焦点をあて、レジスタンスのメンバーでなかった彼がその英雄となった過程を分析した。(3)においては、ユダヤ系外国人の子どもの逮捕・拘禁・移送が、1942年7月のヴェル・ディヴ事件から始まったことと、ユダヤ系の子どもたちを匿う活動の存在に着目し、それらの実態を明らかにした。(4)では、近年までタブーとされてきた「ボッシュの子」に対する戦後の迫害や虐待の事実を明らかにした。 以上の点は、これまでのフランス第二次世界大戦史研究ではあまり知られていなかったことであり、子ども史研究としてはもとより、広く現代史研究の領域においても新たな貢献を行ったと考えている。以上の研究成果は、「第二次世界大戦期のフランスにおける子どもたち」(『愛知県立大学外国語学部紀要(地域研究・国際学編』第43号、2011年3月、191-213頁)に掲載した。
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