研究課題/領域番号 |
22520749
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
重松 知恵子 愛知県立大学, 外国語学部, 教授 (40187349)
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キーワード | 西洋史 / 教育史 / 家族史 / 子ども史 |
研究概要 |
計画に基づき、「19世紀フランス民衆世界の子どもたち」というテーマに関する研究を行った。 子どもに関する歴史学の研究成果を、19世紀の文学作品や自伝、児童書などと対比する形で検討を進めた。その結果得られた知見を、次の点にまとめた。 第1は、19世紀都市の浮浪児に関わることである。治安関係の史料と、ユゴー、ゾラなどの文学作品の分析により、19世紀ヨーロッパの浮浪児はとりわけ、都市化と工業化の進行する近代社会に顕著な特徴であることを解明した。 第2に、農村における子どものありかたについて検討した。厳しい農業労働に早くから子どもたちも従事したこと、他方で都市との関わりが深く、都市労働者に転じることも少なくなかったこと、そして、19世紀における初等教育の普及が、子どもたちの生活を大きく変えていったことなどを明らかにした。 第3に、産業革命以降、工業のあり方があらたな児童労働の形態をもたらし、当初は少なくとも、過酷で深刻な状況であったことを明らかにした。 第4には、19世紀後半から児童保護の政策がとられるようになった点に着目し、その意義について解明した。その結果、国民国家の時代に民衆の子どもたちも国家の担い手として考慮されるようになり、それが一連の政策の背景にあったことをつきとめた。 以上の成果は、「19世紀フランス民衆世界の子どもたち」(『愛知県立大学外国語学部紀要(地域研究・国際学編)』第44号、2012年3月、167-186頁)に掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度の研究計画に掲げた19世紀民衆世界の子ども像に関しては、ほぼ予定通り論文を書くことができた。 その成果は、紀要論文という形で公表することができたが、それ以外には業績を上げることができなかったので、おおむね順調というところである。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の課題である「近代家族が抱えた諸問題」というテーマの分析・検討を終えた後には、3年にわたる本研究の締めくくりとして、単著の公表を考えている。第1章では近現代の家族像・子ども像の変遷を、第2章では民衆世界の子どもを、第3章では第一次世界大戦下の子どもを、第4章では第二次世界大戦期の子どもを扱う予定である。
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