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2012 年度 実績報告書

西欧中世における手写本テクストの受容・生成プロセスに関する比較史的研究

研究課題

研究課題/領域番号 22520752
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

岩波 敦子  慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (60286648)

研究期間 (年度) 2010-04-01 – 2014-03-31
キーワード中世ヨーロッパ史 / 文献学 / 手写本 / 教育史 / 科学テクスト / 天文知 / アストロラーベ / アバクス
研究概要

平成24年度は、中世ヨーロッパにおいて独自の発展を遂げた計算表アバクスに関する手写本テクストの分析結果をまとめ発表する準備に従事し、その成果を雑誌論文に発表した。アバクス論は自由七科artes liberalesの算術と幾何に関わる教育テクストであるが、平成23年度の分析対象であるアストロラーベに関する天文学テクストに続いて、自由四学科quadrivium教育の実践の一端を明らかにした。アバクスを用いた計算術に関する論稿には、ヒンズー・アラビア数字のもっとも初期の形態であるGhubar記号がヨーロッパで初めて登場する。手写本テクストの分析を通じてその伝播プロセスを丁寧に追うことにより、アラブ世界からの学知の受容の実態に接近した。また後半期は中世ヨーロッパにおけるユークリッド幾何学の受容と伝播の分析に着手した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本研究の目的は、ヨーロッパ中世手写本独特の生成プロセスの動態的分析である。手写本の特徴は、テクストそのものの可変性と、学知の継受者の関心に応じて自由に編纂されるテキスト群(compilation)にあるが、教育拠点を形成していた各修道院の所蔵状況調査という当初の目的を踏まえて、個別テクストの受容プロセスの分析に着手、知の仲介者であるアラブの科学知と関連させながら、天文知および代数・幾何・算術など数学知のテクストの分析を通じて、イベリア半島から北西ヨーロッパにいたる地域の知の連続性を具体的に明らかにすることができた。

今後の研究の推進方策

本課題の最終年度にあたる平成25年度は、平成23年度の天文学テクストに関する分析、24年度の計算法の系譜に関する研究成果に基づき、中世ヨーロッパにおける古代ギリシャの自然科学知の継受を、学識者たちの交流と手写本テクストの分析により整理する。とりわけ平成25年度の分析対象となるのは、イスラーム世界を経由した知の受容過程で独自の発展を遂げた天文学と占星術である。天文知にかかわる手写本テクストの伝播状況の分析を通じて、いわゆる12世紀ルネサンス呼ばれる知の変革期以降の学問諸領域の変容と、環地中海世界において中世ヨーロッパ世界が果たした役割を考察し、知の先導者たちによる科学知の継承プロセスを鮮明にしていく。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2013

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] アバクスからアルゴリズムへ-ヨーロッパ中世の計算法の系譜2013

    • 著者名/発表者名
      岩波敦子
    • 雑誌名

      慶應義塾大学言語文化研究所紀要

      巻: 44 ページ: 43-68

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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