平成23年度は、7月にロンドンにて史料調査を行った。手稿史料の調査はBritish Library、Gray's Inn LibraryおよびWestminster Archives Centreにて、刊行史料等の調査はlnstitute of Historical Researchにて行った。 今年度の調査の対象は、主に次の三点となる。 1.内戦期の宗教政策をめぐる長期議会の審議内容について、既に刊行されている複数の議事記録の内容を整理し、イギリス各地の文書館で集めた各種手稿史料の内容と比較・統合する作業を進めた。 2.Westminster Archives Centreにて、セント・マーガレット教会の教区史料を調査し、1630年代から50年代にかけての政治的変動と教会設備や礼拝様式の変化の関係について考察した。セント・マーガレット教会は、議会の会期中は庶民院議員の教区教会の役割を果たしていたため、宗教政策をめぐる議会の動きを地域の視点から捉え直すうえで有意義な調査となった。 3.長期議会初期における国教会主教弾劾の過程について、ダラム主教座聖堂の聖職者でのちにダラム主教となるジョン・コジンの事例を中心に調査を開始した。本研究ではこれまでロンドンを中心に調査と考察を進めてきたが、スコットランド国境に近く、一方でロード主義の影響が色濃いダラムへ研究対象を拡大することで、革命期の宗教と公共圏の関係について新たな展望が得られると考えた。平成24年度はダラムでの史料調査を実施する計画である。 研究成果の発表としては、2012年に出版予定の編著『複合国家イギリスの宗教と社会』(岩井淳編)に、本研究の成果の一部を反映させた。また、国内の学会や研究会を通して協議や情報交換を行い、専門知識の提供を受けた。
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