本研究の目的は、植民地経済を変革し、国民の富の増大を目指した独立期アフリカ諸国が掲げた開発主義の課題が、じつにこの半世紀の間ほとんど実現しなかったとの認識に立ち、その歴史的背景を検証することにある。総じてみれば、アフリカの旧英領諸国が独立に際して直面した喫緊の課題とは、旧宗主国イギリスの開発政策を受け入れ、経済発展に資する政策を早急に具現化することにあったといえる。本研究は、その苦闘に満ちた歩みを具体的に明らかにするなかで、アフリカの脱植民地化と経済発展の史的特質を考察する試みである。 この研究課題を進めるにあたって、まず平成22年度には、先行研究の整理を踏まえたうえで、分析対象の国際的背景をなすイギリスの開発政策の具体的展開について、イギリス側の資料を中心に検討した。先行研究として、(1)イギリス帝国史、特に経済史、(2)国際関係論、特に崩壊国家論、(3)アフリカ経済史、(4)開発経済学等々の分野を中心に整理を試み、本研究全体に関わる研究動向についての概観を得ることができた。 そのうえで、イギリス側が戦後どのようにして(旧)植民地・開発途上国に対して開発援助政策を展開してきたかについて、国立公文書館TNA所蔵文書を中心に調査・考察した。その結果、特に脱植民地化が本格化する1960年代を一つの転換点として、戦後の「植民地開発政策」が終わり、ポストコロニアル世界に対応した新しい戦略(金融業務に重点をおいた)が打ち出されていく経緯を跡づけることができた。 これらの成果は、二つの招待講演にて公表した。
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