本研究の目的は、植民地経済を変革し、国民の富の増大を目指した独立期アフリカ諸国が掲げた開発主義の課題が、じつにこの半世紀の間ほとんど実現しなかったとの認識に立ち、その歴史的背景を検証することにある。総じていえば、アフリカの旧英領諸国が独立に際して直面した喫緊の課題とは、旧宗主国イギリスの開発政策を受け入れ、経済発展に資する政策を早急に具現化することにあったといえる。本研究は、その苦闘に満ちた歩みを具体的に明らかにするなかで、アフリカの脱植民地化と経済発展の史的特質を考察する試みである。 この研究課題を進めるにあたって、平成24年度には、第二次文献の渉猟を継続することに加えて、イギリス国立公文書館(The National Archives)所蔵のイギリス政府関連文書を中心に、史資料の調査と分析を行った。それらの作業を踏まえて、本年度は、『ヨーロッパ文化研究』第13巻(2012年)に論文「イギリス対外援助と帝国の解体」(89-129頁)を発表した。本論文は、第二次世界大戦後のイギリス開発援助政策の経緯を時系列的にまとめたものであり、本研究のまとめとなる本年度の実績のうち、イギリス開発援助政策の概観を得る研究として位置づけられる。実際に、独立期アフリカにおいてこれらの援助がどのように開発に結びついたのか(あるいは結びつかなかったのか)という点については、近刊に章分担執筆した業績等で発表予定である。イギリスの援助政策が1960年代後半以降退潮傾向に陥り、独立期アフリカの開発政策にほとんど視することができなかった経緯についての考察は、近刊の「アフリカからの撤退―イギリス開発援助政策の顛末」『国際政治』第173号(2013年6月刊行予定)で発表予定である。
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