研究課題/領域番号 |
22520757
|
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
池田 嘉郎 東京理科大学, 理学部, 准教授 (80449420)
|
キーワード | 西洋史 / ロシア史 / ソ連史 / 帝国 / ナショナリズム |
研究概要 |
本年度は、ソ連を「共和制の帝国」として実証分析するための史料の検討を進めた。その過程で、ソ連史に先立つ帝政ロシア史における民族関係や中央-地方関係、さらにはエリートの帝国認識について、解明を行なう必要性があるとの認識を得た。この認識にのっとり、1905年革命期から第一次世界大戦期にかけての帝政ロシアにおける関連史料の分析を進めた。分析の結果、いくつかの重要な知見を得ることができた。具体的には、専制の最有力な批判勢力であった自由主義者が、どのような帝国統治の概念をもっていたのかについて、史料収集を行なうとともに、実証分析を進めた。とりわけ、自由主義者の政党であるカデット党(立憲民主党)の指導者のひとりであり、同党における民族問題・地方自治問題の責任者、フョードル・ココシキンの著作と活動について分析した。分析の結果、ココシキンの帝国認識には、ポーランドとフィンランドにのみ自治を認め、それ以外の地域には特別な扱いを認めないという、多元的な自治観があることに光をあてた。ココシキンのこの認識は、彼が留学したドイツにおいて、国法学者イェリネックから学んだことから、大きな示唆を得ていた。イェリネックは、諸領邦からなるドイツ帝国の国法学者であったから、自治の問題には特別な関心を寄せた。その彼の精緻な自治の定義を踏まえて、ココシキンは自治を非常に厳密に定義し、ポーランドとフィンランドのみがそれに該当しうると考えたのである。ココシキンの帝国認識に関する以上のような知見を、2012年1月に北海道大学スラブ研究センターで開かれたユーラシア地域大国の比較研究に関する国際シンポジウムにおいて、英語で報告し、高い評価を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ソ連帝国論を展開するための前提としての、帝政ロシア史研究、さらには近現代ヨーロッパ史研究について、帝国と国民国家という観点から、論文をまとめ、報告も行なうことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
ロシアのアーカイヴでの調査が難航する場合(アーカイヴの体制による場合もあれば、予期せぬ災害による場合もある)、マイクロフィルムやの購入や書籍の電子化サービスなどを通じて、史料調査に停滞が生じないように留意する。
|