研究課題/領域番号 |
22520757
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
池田 嘉郎 東京理科大学, 理学部, 准教授 (80449420)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ロシア / ソ連 / ロシア史 / 西洋史 / ナショナリズム / 帝国 / 社会主義 |
研究概要 |
「共和制の帝国」としてのソ連体制の成立についての中間報告的な文書として、論文「ソヴィエト帝国論の新しい地平」を『世界史の研究』234号(2013年2月)に発表した。そこにおいて、まず、ソヴィエト帝国論が今日盛んな背景について論点をまとめ、ついで1920年代のソ連における民族政策の特徴、その評価について論じた。とくにコレニザーツィアと呼ばれる現地化政策の評価をめぐり、マーチンとハーシュという二人の研究者の議論を整理し、そののち自分自身の分析概念である「共和制の帝国」論について展開した。続いて1930年代に入ってからのソヴィエト民族政策の転換(本質主義的民族概念の登場)について、その背景および歴史的意義について論じた。従来の議論において見られた、体制の堅固化のためというプラグマチックな議論(マーチン、塩川伸明)に対しては、イデオロギーの役割をより重視する視点から批判をくわえた。他方、イデオロギーを重視するハーシュに対しても、1930年代半ば以降に見られる本質主義的民族概念について説得力ある議論が出せていない点を批判した。自分自身の「共和制の帝国」論に基づき、あくまでイデオロギー重視の観点から、本質主義的民族概念の登場についても議論を展開した。社会主義建設の基本的完了に伴う現状の聖化、それによる民族概念の相対的な堅固化について、いくつかの具体例を挙げながら論じた。最後に、広範な住民からなる「民族」(=「国民」)が、労働を通じて政治主体化して歴史の主体となるというスターリン時代に確立した民族概念について、第二次世界大戦後の日本社会、とくにその歴史学界に深い影響を与えたことを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「共和制の帝国」ソ連について、研究史を踏まえつつ、独自の見解をまとめるところにまで研究が進展した。中央の民族政策についても、1920年代とそれ以降の両方の時期について、おおむね順調に史料収集を進めている。他方、地方アーカイヴの利用についてはまだ十分ではないので、この点については次年度に不十分なところを埋める。
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今後の研究の推進方策 |
ガルフ(ロシア連邦国立アーカイヴ)の内務人民委員部文書の調査を進める。その中にはいくつかの自治共和国、自治州の史料も含まれているので、それらの史料に基づき、自治共和国・自治州成立に際しての具体的状況を明らかにする。
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