本研究の初年度の計画として設定した三つの課題のうち、まず(1)の、すでに研究代表者の手許にあるユダヤ人関連史料を用いることによる第一国会選挙時(1922年)における「民族的少数派ブロック」結成の経緯の解明については作業が順調に進み、すでに第二国会選挙時(1928年)における二度目の同ブロック結成の経緯にまで分析のメスを入れている。そして、その成果も近々論文として発表できる予定である。とりわけ第二国会選挙時の検討に関しては、シオニストの主要日刊紙(Nowy Dziennik)で、研究代表者が所有していなかった時期(1928年)のマイクロを科研費補助金によって入手でき、それを利用しえたことが決定的な意味をもった。しかし、同ブロックをより多面的に検討する素材として期待される主要なウクライナ語紙誌およびウクライナ人政治家に関する文書館資料の収集については、いまだ不十分であり、今夏に予定しているリヴィウでの文書館調査によって実効を高めたい。ただし昨年度においても、現地に赴かずとも可能な方法でコピーやマイクロの入手に努めた結果、最も重要な日刊紙(Dilo)の、本研究にとり必要な時期の号に関しては、CD-ROMで入手することができた。一方、残るふたつの課題(2)本来選挙対策として誕生した「民族的少数派ブロック」のその後を、実際の議会活動、さしあたり第一国会期(1922~28年)における活動の中で、議事録などを利用して跡づける作業、および(3)戦間期の東中欧における民族的少数派ブロックの反響と、ポーランド以外の諸国における、同ブロックを範とした諸民族連帯の事例の比較考察に関しては、(1)の課題を果たす中で、第二国会選挙時の「民族的少数派ブロック」の検討を優先したため、史料収集には進捗が見られたものの十分な検討にまでは入れなかった。これらは本年度の課題としたい。
|