戦間期ポーランドにおける民族的少数派の問題を議会政治との関わりにおいて考察することを目的とし、とりわけ1920年代における「民族的少数派ブロック」の経験に注目する本研究の主たる課題は、同ブロックを一枚岩的な存在として論じるのではなく、それに参加したそれぞれの民族的少数派の論理、さらにはそれぞれの民族内部における諸党派間の相違にも留意し、「民族的少数派ブロック」の多面的な像を描き出すことである。 そもそも同ブロックについては、これを俎上に載せた研究自体存在しないが、研究代表者は、ポーランド・シオニストをめぐる研究の過程で収集したユダヤ人関連の諸史料を通じて、同ブロックの成立と活動の輪郭については概ねそれを把握することに成功してきた。しかし、ユダヤ人以外の諸民族の視点をも交えた考察を行うためには、まず各民族の議会活動の検討を可能にする史料の特定、さらにはその所在の調査から始めなければならなかった。昨年度は、ウクライナでの史料調査によって、ウクライナ人の議会活動の検証に必要な、ある程度まとまった史料を入手することが出来た。 今年度に残された課題であるドイツ人とベラルーシ人に関連する史料のうち、ドイツ人については、戦間期ポーランドで発行されたドイツ人向けの主要諸紙(いずれもドイツ語日刊紙)の所在を特定でき、限定的ではあるが、マイクロでそれを入手することに成功した。またベラルーシ人に関しては、秋に実施したベラルーシ国立図書館での調査、および本研究に近いテーマを専門とするベラルーシの歴史家との意見・情報の交換を通じて、それまで不明であった関連史料の所在の特定に成功し、その一部を入手することが出来た。これらの史料の全面的分析に基づいた「民族的少数派ブロック」像の提示にはさらなる作業を要するものの、これら諸史料の存在とその所蔵先の特定自体、史学史においては一定の意義をもつものと思われる。
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