平成25年度は、平成24年度までに本課題に関連して実施してきた発掘調査資料の整理作業、及び測量調査の成果をまとめ、調査報告書を刊行することを目標に、以下の通り作業を実施した。 報告書の対象は当初、那賀郡家周辺遺跡(国指定史跡:茨城県水戸市台渡里官衙遺跡群発掘調査成果・水戸市二所神社古墳測量調査)、筑波郡家周辺遺跡(つくば市平沢3号墳発掘調査)の各調査成果と、那賀郡家周辺における地名聴取調査の成果を予定したが、印刷経費に計上した予算に限界があったため、すでに成果の一部を公開している筑波郡家周辺遺跡の再録分を削減し、那賀郡家周辺遺跡における成果に集約した。これにより、『常陸国風土記』に描かれた世界のなかでも、とくに重要な「国郡制施行」前後における政治的中心地の具体像について、郡(評)家、古墳、官道など相互に有機的な関係を示しつつ、提供できたと思料する。 平成25年度の作業としては、入稿原図の製図、写真撮影、レイアウト、本文執筆、入稿、校正を行い、『科学研究費補助金(基盤(c))成果報告書2010-2013年度 常陸国那賀郡家周辺遺跡の研究 『常陸国風土記』にみえる律令期以前の歴史的景観復原に関する実証的研究/研究代表者田中裕』を書名として、300部・88頁の報告書にまとめ、刊行した。 上記報告書を作成したほかに、当初申請書の計画に盛り込んでいた茨城県水戸市愛宕山古墳の測量調査を併行して実施し、平成24年度に実施済み部分の図面あわせを行いながら、不足する部分や矛盾する部分を解決するため、補足の測量を実施した。これにより、墳丘の主要部分については概ね測量調査を完了した。この測量調査は予算圧縮の中で長期計画に変更したため、上記報告書には盛り込めなかったが、本課題終了後に採集遺物等の整理も行った上で、別途公表する予定である。
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