本年度は、3つの課題を設定して研究を進めた。具体的な研究の進行状況は以下の通りである。 第1の課題は、朝鮮古蹟調査報告書掲載写真の集成および検討である。本年度は、本格的な写真に対する検討をはじめる前の基礎作業として、報告書の図版・挿図目次に記載された写真の内容および撮影者などに関するデータの入力作業をおこなった。作業は7割程度終了し、今後の研究を進めるための大まかな見通しを立てることができた。 第2の課題は、慶州の遺跡関連写真の集成および検討である。本年度は、国立慶州文化財研究所からの要請もあり、京都大学考古学研究室が保管する金冠塚関連資料(写真・図面・原稿など)の整理・検討をおこなった。その結果、これまで知られていなかった発掘直後の写真が存在すること、遺物の整理過程において写真撮影が2回にわたっておこなわれており、それが報告書の作成作業と密接に関連することを明らかにした。この研究の成果は、2011年度前半に韓国で刊行される予定である。 第3の課題は、写真に写された遺跡の現状調査である。今年度は、主に慶州市内に残された遺跡(芬皇寺、雁鴨池、瞻星台、武烈王陵、旧朝鮮総督府博物館慶州分館敷地、鶏林、仏国寺など)を対象として、戦前に撮影された写真との比較検討をおこなった。その結果、遺跡を撮影する方向には一定の傾向がみられることと、写真に写された風景の分析により、各写真の撮影時期をある程度まで特定できる可能性が高いことを明らかにすることができた。
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