本研究は、山陰地方における出現期の前方後円(方)墳の考古学的検討を通じて、弥生時代から古墳時代にかけての社会変化の実態を究明することを目的とする。具体的には、数10年以上前に出土遺物が知られているが、それらがまとまって報告されていないために古墳の性格や年代観の検討に支障があるものについて、再調査、遺物整理作業を実施する。また、すでに申請者が蓄積してきた調査資料、データを整理するとともに、今後の調査、研究に向けた情報整理、調査を行なう。平成22年度は、主として以下の(1)~(3)の作業を行なうとともに、研究に必要な図書や調査器具等の物品を購入した。 (1)平成22年8月~9月に実施した普段寺1号墳第8次発掘調査成果の資料整理と概要報告書作成を行なった(平成23年3月25日刊行、『普段寺古墳群III-第8次調査概要報告書-』普段寺古墳群調査団、p.20)。墳形を確定するとともに、古墳の築造年代を窺いうる土師器等の資料を得たことが成果である。(2)鳥取県立博物館および鳥取市埋蔵文化財センターに収蔵されている鳥取市・古郡家1号墳、同・六部山3号墳出土資料の再整理を行なった(平成22年11月、平成23年2月)。(3)東京国立博物館に収蔵されている倉吉市・上神大将塚古墳、湯梨浜町・馬ノ山4号墳出土遺物等について資料調査を行ない(平成23年2月)、前者の資料は観察し終えた。 なお、かつて古郡家1号墳の調査に携わった関係者から当時の状況を情報収集し、調査資料の再整理を行なう予定であったが、関係者のご都合により延期することとなった。H23年度以降に改めて実施したい。
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