本研究は、山陰地方における出現期の前方後円(方)墳の考古学的検討を通じて、弥生時代から古墳時代にかけての社会変化の実態を究明することを目的とする。具体的には、数10年以上前に出土遺物が知られているが、それらがまとまって報告されていないために古墳の性格や年代観の検討に支障があるものについて、再調査、遺物整理作業を実施する。また、すでに申請者が蓄積してきた調査資料、データを整理するとともに、今後の調査、研究に向けた情報整理、調査を行なう。平成24年度は、前年度、前々年度に引き続き、以下の①~③の作業を行なうとともに、研究成果報告書を刊行した。 ①平成24年8月~9月に普段寺1号墳出土遺物の整理作業を行なった。これは過去に申請者らが行なってきた発掘調査の出土品に加え、1956年に出土した遺物(現在佐々木謙コレクションとして米子市教育委員会が管理)の整理作業を行なったものである。その結果、不明だった土器の器形や副葬鉄器の内容が明らかになるなどの成果があった。 ②大山町徳楽方墳出土遺物(京都大学考古学研究室所蔵)、馬の山4号墳出土遺物(東京国立博物館所蔵)などの資料調査を行なった。 ③普段寺1号墳の発掘調査や遺物整理の現時点における見解を総括した報告書を作成し、刊行した。 なお、本研究とは別に、新鳥取県史編さん事業の一環として、鳥取市古郡家1号墳、六部山3号墳など、本研究と関連が深い古墳の出土遺物の再整理作業を2006年度以降、断続的に行なっていた。その成果報告書を2013年度に刊行した。本研究には、その再整理事業の過程で得られた知見の一部が生かされている。
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