本年度は資料収集を中心に作業を行った。まず夏季には南国市坂ノ松古墳の墳丘測量調査・石室実測調査を実施するとともに、冬季には明見彦山1号墳の発掘調査を行った。この2古墳は南四国でも、古相を呈する横穴式石室を持つがその内容が明らかでなかった。坂ノ松古墳は石室図面が存在していなかった。明見彦山1号墳も出土遺物が知られておらず、時期が不確定であった。前者は詳細な実測図を作成してその報告書もすでに刊行し、明見彦山1号墳も副葬品の一部を明らかにしてTK209型式期(6世紀末から7世紀初頭)の古墳であることを明らかにすることができた。この2古墳は規模こそ異なるものの共通する石材使用が認められ、石室構築において関連があることが明らかとなりつつある。古墳が南国市においてどのように展開するかを明らかにする手がかりを得つつある。 また、明見彦山1号墳がTK209型式期に属することも重要な知見である。明見彦山1号墳に隣接する明見彦山3号墳は、1号墳よりも1段階時期的に古い。明見彦山1号墳はいわゆる舟岩型に属し、その中でも古相に属する。3号墳は明見3号型石室である。すなわち、明見3号型石室が舟岩型石室に先行して南四国では展開する可能性が出てきたのである。 現在、瀬戸内側の石室資料を収集しているところである。これらと明見彦山1号墳ならびに3号墳石室を比較することにより、どのような経路と過程を経て南四国に横穴式石室が導入されたかが、明らかになるであろう。
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