研究課題/領域番号 |
22520768
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
清家 章 高知大学, 教育研究部・人文社会科学系, 教授 (40303995)
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キーワード | 考古学 / 横穴式石室 / 南四国 / 瀬戸内 / 交流 |
研究概要 |
本研究の柱の一つが南四国の横穴式石室墳の調査である。南国市明見彦山1号墳の発掘調査は予定通り今年度で終了した。その結果、本墳石室の構造がほぼ解明できた上、出土土器から築造時期も明確にできた。その結果、舟岩型と称される南四国石室の導入時期がほぼ明らかとなり、明見3号型などの石室とは時期差があることが明確となった。さらに当初の計画にはなかったが、明見彦山1号墳と類似する石室を持つ南国市小倉山古墳の測量実測調査を実施し、報告を行っている。こうした調査による資料収集だけでなく瀬戸内の横穴式石室資料の収集もあわせて行っている。 南四国の横穴式石室墳の分析は順調に進み、古墳の階層差が武器・馬具と関連し、軍事的要素を持つことを明らかにしている。これにより、南四国における横穴式石室墳の展開の背景には、軍事的編成や軍事的要素があった可能性が指摘できる。また他地域間との交流については古墳の立地という新たな視点を導入して成果を見せつつある。南四国の横穴式石室墳には風水的立地にあるものが散見される。明見彦山1号墳もその1例である。しかし、瀬戸内の横穴式石室墳で風水的立地にある古墳は限られており、風水的立地を鍵として地域間交流の実態を明らかにできる可能性を示した。 また時期によって、南四国が交流する地域は異なる可能性が考えられる。TK43型式期に展開する明見3号型石室は讃岐や阿波でその存在は認められない。TK209型式期の舟岩型石室導入期には、讃岐の影響が垣間見える。 このように横穴式石室墳の研究により、瀬戸内と南四国の交流の具体相が明らかになりつつあるというのが現段階の状況である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた南国市明見彦山1号墳の発掘調査は予定通り本年度で終了した上に、計画にはなかったが比較資料として重要な同市小倉山古墳の測量実測調査も行い、後者は報告書も刊行済みである。この点は当初の計画以上の成果と進展である。瀬戸内の横穴式石室資料の収集は伊予の資料がやや遅れているが、それ以外はおおむね完了した。資料に基づいた石室の比較研究は順調に進み、古墳の立地から地域間交流を明らかにする論考も発表している。総合的にみて(1)あるいは(2)といえるが、伊予の資料収集がやや遅れているのを加味して(2)とした。
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今後の研究の推進方策 |
2012年度は収集した資料に基づいて石室の比較研究を進展させる。これにより、南四国と瀬戸内の交流関係を具体化させる。また調査した明見彦山1号墳の整理作業もあわせて行う。
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