研究課題/領域番号 |
22520771
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研究機関 | 盛岡大学 |
研究代表者 |
熊谷 常正 盛岡大学, 文学部, 教授 (50275583)
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キーワード | 粘板岩系石器 / 生産遺跡 / 石棒・石刀 / 縄文時代 / 北上高地 |
研究概要 |
【石棒類生産関連遺跡の発掘調査】岩手県一関市藤沢町保呂羽に所在する平前遺跡に関して発掘調査を実施した。その結果、平前遺跡はA・B二地点に区分でき、A地点では縄文時代後期後葉の土器類とともに石棒未成品が出土した。これにより、以前から採集されていた石棒類の時期を特定することができた。B地点では、縄文時代晩期中葉の土器片が出土し、この遺跡が縄文後期から晩期にかけて営まれた遺跡であることが確認できた。なお、平前遺跡で採集されていた石棒類の写真撮影・実測図作成を行い、これらの資料を含めて、発掘調査の概要報告書を刊行した。 【石棒類資料調査】岩手県一関市千厩町に所在する南小梨蛇王遺跡及び畑ノ沢遺跡で採集され、旧千厩町教育委員会が保管している石棒類約80点について、写真撮影、実測図作成を行い、22年度に調査した嶺沢遺跡群、23年度調査の平前遺跡との比較を行った。この結果、南小梨蛇王遺跡では粘板岩系石材だけにとどまらず、他地域から搬入された可能性のある石棒があること、これまでと同様に故意に折断した例が多いことなどを確認した。加えて、文献により岩手県内出土の成興野型石棒について集成し、そのうち典型的な資料について実測図を作成した。 【石棒流通システムの検討】南部北上高地周辺の石材を用いたとされている新潟県村上市元屋敷遺跡資料を実見し、石材の特徴、製作技法の分析を行った。また、秋田県内の縄文晩期遺跡から出土した石棒類を実見し、石材・製作法等に関して検討した。 【研究史関連資料調査】明治20年代に岩手県南部を巡遊し石棒などの記録を残した蓑虫山人に関して彼の訪問先を訪ね関連資料の確認を行った。この結果、絵画作品など複数の資料を確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
岩手県南部の石棒生産に関わる遺跡から出土、採集された資料については約200点の実測図を作成するなど、現在確認できる資料の大部分について調査・検討を行うことができた。これにより周辺の石材産出地を含め素材獲得から製作にいたる工程がほぼ把握できた。また遺跡ごとの比較から保有のあり方も想定できた。また、流通システムに関しては遺跡発掘報告書等文献調査で判明できる予想がついた。
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今後の研究の推進方策 |
1、南部北上高地東縁部にあたる宮城県沿岸北部地域の関連遺跡については東日本大震災の影響により現地確認が困難な状況にあるが、津波被災地以外の場所に所在する遺跡の確認を行い概況を把握する。 2、これまで調査した粘板岩系石器は、肉眼観察から大まかに三種類の石材に区分できた。この違いが何に起因するのか岩石学的な分析と周辺地質との関わりを検討する。
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