本年度は、7月下旬から8月下旬までトルコのサラット・テペ遺跡で発掘調査を行い、都市形成期(前5~4千年紀)の遺構・遺物を調査した。8月下旬にディヤルバクル博物館のサラット・テペ遺跡出土遺物の観察調査を行った後、8月末より9月下旬までトルコのコジャエリ大学考古学研究室にてサラット・テペ遺跡で出土したウバイド期から後期銅石器時代後半にかけての土器資料の観察調査を実施して、ティグリス川上流域における都市形成期の土器製作技術の変遷について比較分析を開始した。トルコ滞在中、日本における焼成実験・分析用の土器資料持ち出し許可を申請し、無事に取得することができた。来年度も、現地にて都市形成期の土器資料の観察記録を継続しながら、土器製作技術の変遷にもとづいた都市化における土器編年構築を目指すつもりである。同時に、早稲田大学本庄キャンパスに設置してある小型土器焼成窯にて土器焼成実験を実施した。申請時には3月中旬の計画だったが、3月11日の東日本大震災により予定が大幅にずれ込み、3月下旬に実験を決行することになった。研究協力者2名(齋藤正憲・早稲田大学本庄高等学院、西野吉論・藤沢市教育委員会)に協力してもらい、土器焼成実験を実施した。実験の成果として、イネ科植物の切り藁や枯れ草を交互に燃焼室へ投入したところ500℃台にまで到達することができたが、ばらけた状態の乾燥牛糞では焔の勢いを弱めてしまうことが判明した。最終的には薪(背板)を投入して900℃台をほぼ1時間維持することに成功したものの、彩文土器の顔料(酸化鉄)は器面にうまく吸着しなかった。来年度の焼成実験にて、小型焼成窯の構造上の工夫ならびに乾燥牛糞の固形化(ペレット状)を試み、再度挑戦する予定である。
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