研究課題/領域番号 |
22520772
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研究機関 | 国士舘大学 |
研究代表者 |
小泉 龍人 国士舘大学, イラク古代文化研究所, 共同研究員 (80257237)
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キーワード | 考古学 / 実験考古学 / 都市化 / 土器焼成技術 / 彩文顔料 |
研究概要 |
本年度もトルコ、サラット・テペ遺跡の発掘調査に参加し、都市形成期(前5~4千年紀)の日干しレンガ建物および土器等を検出した。8月4~27日に現場作業を実施して、還元焔焼成技術の初期段階を示す、後期銅石器時代初頭の灰色磨研土器を建物床面で確認した。現地宿舎に9月16日まで滞在しながら土器資料の整理・分類作業を行った。滞在中、焼成実験・分析用の土器等サンプル持ち出し許可を申請し、無事に取得することができた。 国内では、2月7日より数日間、早稲田大学本庄キャンパスと拙宅にて、研究協力者(齋藤正憲、西野吉論、斎藤あや、笹間正紘)の協力により、細断麦藁と牛糞を捏ね併せて燃料塊を試作し、小型土器焼成窯の焚口南側を拡張する補修工事を実施した。同時に、拙宅では、都市形成期の復原土器を成形して、何通りかの彩文顔料を調合して塗彩した。3月10日、4名の研究協力者らと共に、本庄キャンパスで焼成実験を行った。前日より雨が降り続いた中、燃料塊・麦藁・薪を交互に投入しながら焼成した。翌日、窯出ししたところ、復原土器はいずれも煤切れが不完全で、彩文顔料は若干の色落ちが観察された。 他方、サラット・テペで採取したサンプルを茨城県工業技術センター・窯業指導所(茨城県笠間市)に持ち込み、1.数点の彩文土器片について、XRF(蛍光X線分析)・XRD(X線回折)により胎土の化学組成、2.残存状態の良好な彩文土器片に関して、μXRF(微少蛍光X線分析)によりマッピング分析を行って顔料成分を調べてもらった。 分析成果として、1.日干しレンガと彩文土器等の化学組成はおおむね類似している、2.ウバイド期の彩文土器はある程度高温で焼成された、3.後期銅石器時代の灰色磨研土器はウバイド彩文土器よりも低温で焼かれた、4.ハラフ・ウバイド過渡期の彩文土器も同程度の温度で焼かれた、5.後期銅石器時代の粗製土器はさらに低温で焼かれた、という諸点を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小型土器焼成窯による焼成実験は、天候不順および燃料塊の試行錯誤のため、今年度はやや期待外れの感があった。しかし、サラット・テペの発掘調査にて、都市形成期の彩文土器を入手する作業は極めて順調に進んだ。そして、同遺跡より持ち帰った土器サンプルの分析も上述したように順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、乾燥牛糞をいかにして燃料として活用するのか、といった点を追究していく。季節的な問題もあると推定されるので、なるべく乾季に牛糞を切り藁と捏ね併せて燃料塊を製作し、天日干しを行う予定である。同時に、小型土器焼成窯の操窯そのものも工夫を重ねて、乾季に効率の良い焼成を実施していく方策を思案している。さらに、サラット・テペより持ち帰る土器資料について、より効果的な分析を国内で行うことを見越した上で、発掘調査の戦略も工夫していきたい。
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