本年度もトルコ、サラット・テペ遺跡の発掘調査に参加し、都市形成期(前5~4千年紀)の日干しレンガ建物・土器等を調査した。7月19~9月16日に現場作業を実施して、後期銅石器時代初頭の土器工房址と推定される建物床面から赤色顔料や還元焔焼成された灰色磨研土器などを検出した。滞在中、分析用試料の持ち出し許可を申請し、無事に取得することができた。 国内では、5月12日より数日間、代表者宅にて研究協力者とアルバイト学生らの協力により、都市形成期の復原土器を成形して、彩文顔料を調合して塗彩した。同時に、細断麦藁と牛糞を捏ね併せて牛糞藁燃料を製作した。10月27日、早大本庄キャンパス(埼玉県本庄市)にて研究協力者と合流して、小型土器焼成窯で焼成実験を行った。牛糞藁燃料・麦藁を交互に投入しながら焼成して、翌日に窯出ししたところ、彩文顔料の色落ちが弱い個体を複数個体確認できた。 他方、サラット・テペで採取した試料を茨城県工業技術センター・窯業指導所(茨城県笠間市)に持ち込み、1.後期銅石器時代の土器焼成窯とウバイド終末期の堆積層から出土したクリンカー、2.後期銅石器時代の工房床面とウバイド後期の住居址床面直下から出土した赤色系顔料などの成分について、XRF(蛍光X線分析)とXRD(X線回折)による分析試験を依頼した。 クリンカーの分析結果として、後期銅石器時代の土器焼成窯は、ウバイド期の類似施設に比べて相対的に低い温度で焼かれていたと推定された。顔料に関しては、粘土に方解石を主成分とする石灰石を配合しており、約500~800℃で煆焼されていたと推定された。今回の分析により、精製粘土に石灰石と酸化鉄を配合して煆焼したものを準備してから各種顔料に用いた、という入念な作業工程の可能性も出てきた。これは本研究による重要な成果の一つである。
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