今年度は、東日本弥生時代の土偶形容器、顔面付土器、土偶を集成した。およそ100点に及ぶデータを報告書や図録類にもとづいてパソコンに入力した。その際、図面や写真もスケールを統一して画像データとして入力し、報告書に備えた。研究の側面では、中国の方相氏という僻邪の図像について研究し、福岡県城野遺跡の石棺墓の壁に描かれた人物像が方相氏の可能性を指摘することができた。この石棺は3世紀であり、すでにそのころに中国の思想が流入している可能性と、その絵画の特徴から前1世紀の弥生中期後半にその流入がさかのぼる可能性を指摘することができた。また、群馬県有馬遺跡の顔面付土器を分析し、それも方相氏に思想的系譜がたどれることを指摘し、さらに4世紀の盾持人埴輪の遡源をなすことを推測した。これらの研究の意義は、弥生時代の中国との交流の一端を思想史という側面から明らかにすることができたとともに、埴輪の起源を探るうえで弥生時代の造形品にさかのぼって研究する必要があることと日本列島を広く俯瞰しつつ行う必要があることを指摘することができたことにある。
|