今年度は本研究の最終年度にあたるために、総括的な研究をおこなった。2年間にわたって行ってきた、弥生時代の人物造形品の集成につき、足りなかった部分である東北地方の弥生時代の土偶と西日本の人物造形品につき、集成作業の補足をおこなった。また、中国東北地方と韓国の新石器時代人物造形品の集成もおこなったが、これは非常に不十分であった。 3年間で行った集成作業の結果は、274件であった。とりまとめとして、①文字情報データをエクセルの形で製作した。②また、それにかかわる文献もエクセルの形で製作した。③縮尺を統一した実測図のコピーをスキャンして1枚の図面に仕上げたものを、36枚作製した。これらの集成結果を踏まえて、①東北地方の弥生時代の土偶、②南東北地方~東海地方における顔面付土器、③同地域における土偶形容器、④西日本における木偶、⑤西日本における顔面付土器、⑥西日本における弥生時代の土偶、⑦西日本における弥生時代の石偶を集成、比較検討し、その特性について、縄文時代の土偶と中国・朝鮮半島の造形品との比較に基づいて、考察をおこなった。 その結果、縄文時代の土偶との間には、僻邪思想の形成という大きな差異が見出され、それが中国からの影響であることを指摘することができた。また、西日本の顔面付土器の影響によって、東日本の顔面付土器や土偶形容器が変化することも明らかにした。具体的には、鳥の造形表現の付加であり、縄文時代の土偶が正面を向いたものが多いのに対して、弥生時代になると斜め上を向く表現が多くなるのは、頭の上の隆起帯表現とともに、鳥に扮して上空を見上げる姿勢が儀礼の際に形成され、それが造形品に表現された結果だと考えるにいたった。また、西日本の人物像の在り方から、縄文時代の土偶が女性像を中心につくられていたのに対して、弥生時代の東日本の人物造形品に男女の像が形成されるという自説を深めた。
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