研究課題/領域番号 |
22520774
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
小林 謙一 中央大学, 文学部, 准教授 (80303296)
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キーワード | 考古学 / 炭素14年代測定 / 縄紋時代 / 竪穴住居跡 / 竪穴住居のライフサイクル / 集落の継続期間 / 環状集落形成過程 |
研究概要 |
この研究では、AMS炭素14年代測定を利用して先史時代の集落・居住の継続期間を実年代で検討する目的で、測定事例を蓄積しその比較検討を進めた。 主要作業としては、昨年度に引き続き縄紋中期の大規模集落である神奈川県相模原市大日野原遺跡の重複住居群の発掘調査をおこない、7基の時期的に連続する重複住居群のうちほぼ主要部が調査区に含まれている4基について全面調査し、考古学的な調査記録を作成した。遺構の重複関係が検証できるセクション面から炭素14年代測定用の炭化物試料数十点を採取した。測定用試料については、共伴土器・石器などの出土資料の基礎整理を行い、共伴関係の明確な炭化物試料について年代測定をおこなうこととして測定対象試料の選定を進め、連携研究者の坂本稔により、前処理など汚染除去を進め、AMS測定については、14試料を測定した。 別に比較検討対象として、縄紋時代早期の岩陰居住で短期的な居住と捉えられる愛媛県上黒岩第2岩陰遺跡の試掘調査をおこない、年代測定の成果を得た。また集落遺跡でも、弥生時代後期の集落で著名な東京都入間城山遺跡の火災住居出土炭化物や東アジアとしての位置づけをみる目的で韓国蔚山市細竹遺跡の新石器時代土器付着物を選定し、炭素14年代測定をおこなった。さらに、昨年に実施した北海道キウス遺跡の盛土遺構の層位別出土炭化材の炭素14年代測定結果についてはその出土状況と青森県三内丸山遺跡他の既存の測定例との比較検討をおこない論文として公表するなど、関連資料の炭素14年代測定研究を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究の基幹を担う縄紋集落の実地発掘調査は、重複住居の調査を完遂し年代測定試料も多数得た上、歴博・山形大学の測定協力を得て、当初計画の10測定を上回る14測定をおこない、昨年の5測定とあわせて重複住居の変遷時間について探る材料を得た。さらに、比較検討資料も上黒岩第2岩陰の縄紋早期の岩陰居住をはじめ、縄紋時代・弥生時代・古墳時代とさらに韓国新石器時代の試料について得ることができたほか、韓国青銅器時代火災住居の事例について年代測定の準備ができた。来年度に縄紋さらにそれ以外の先史時代集落の継続期間や、住居の構築・作り替えの時間について、具体的に検討を加えることが十分可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画の通り、典型的な縄紋中期集落である大日野原遺跡竪穴住居の重複状況を調査し、考古学的情報を把握する。年代測定も進めるが、検討の基盤としてしっかりした考古学的成果を第一にまとめる。 昨年までの研究を続け、各遺跡・住居の年代測定数を増し、環状集落の形成過程やその間の断続・継続について明らかにする。考古学的成果と測定結果を重ねることで、研究目的である縄紋集落の継続性、途中に断続があるかどうか、規模、一時的な集落景観について実証的に時間的復元を検討することができる。 今年度の課題として関東地方以外の朝鮮半島から西日本・北海道までの、縄紋時代早期~古墳時代における集落遺跡の継続期間の個別事例を集めたが、統合した成果にまとめる必要がある。そのため、測定した結果を同一の基準で相互に比較検討する。異なる地域・時代について比較検討する基準を整備できれば今後の研究にも大きく寄与するだろう。また、年代測定の方法論的整備も検討したい。ウイグルマッチングの検討など年輪年代や較正曲線とあわせ見ることが必要である。多面的な検討を重ねることで、年代測定の高精度化について検討していくことにもなり、自然科学研究にもフィードバックし得ると考える。
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