昨年度に引き続き、神奈川県大日野原遺跡の縄文時代中期の集落跡の発掘調査とその整理作業をおこなった。重複する縄文時代中期竪穴住居5軒の住居出土の炭化物について炭素14年代測定し、住居の構築の順番ごとの年代を推定した。その結果、最も古い5号住居の年代は絞りきれなかったが、曽利1式~4式期の4軒の住居のうち曽利1式期の住居は200年度穂古いが、その後の曽利3b式~曽利4b式の住居3軒については約100年間の間で住居を完全に埋め戻してから構築していく状況が復元できた。さらに比較材料として、山梨県梅之木遺跡・堰口遺跡や栃木県仲内2遺跡などの縄文時代中期住居の年代測定をおこない、1軒の住居の使用期間が10年程度と考えられる測定結果を得た。 縄文時代中期集落の存続期間や一軒の竪穴の埋没にかかる時間を考察し論考にまとめるとともに、これまでの研究で検討してきた福島県井出上ノ原遺跡、神奈川県大日野原遺跡の発掘調査報告書を刊行した。年代測定結果も合わせて報告したほか、大日野原遺跡の事例については学会発表もおこなった。山梨県内集落での火災住居出土の炭化材の年輪試料によるウイグルマッチングを利用した年代測定例について分析を進めるなど、住居の構築・使用・廃棄に係わる時間推定について、多くの成果を得ることができた。 さらに比較対象として、縄文時代以外の事例である東京都入間城山遺跡の8世紀の火災住居炭化材のウイグルマッチングや、韓国新石器時代の土器付着物、青銅器時代集落の火災住居の炭素14年代測定を行い、その分析もおこなった。日本古代の火災住居では古材を混ぜて住居を構築した可能性を検討し、韓国青銅器集落では、集落内で同時期の火災住居例が認められるなど、集落の営みについての検討材料を得ることができた。
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