今年度においては、弥生時代の特性を把握するため、弥生時代のみならず、縄文時代後晩期における古病理学所見に関する調査・研究を実施した。 弥生時代に相当する人骨資料は、北部九州などの特定地域を除いて、資料の遺存状態が総じて不良である。そのため、その様相を把握することが困難な状況にある。 しかし、弥生時代よりも古い縄文時代に相当する人骨資料における古病理学的所見をみていくことにより、北部九州において弥生時代の特性を明らかにすることは可能である。 例えば、縄文時代後期に相当する福岡県山鹿貝塚出土人骨における様相を見つつ、弥生時代中期の福岡県金隈遺跡出土人骨を見ていくと、中期に本格化した日本列島への形質の異なる人々の渡来をあらためて認識することが可能となる。 また、弥生時代中期には、骨病変の中には、クリブラ・オルビタリアなど渡来的な形質を持つ個体に出現頻度が増加するものが確認されている。こうしたことから、弥生時代の食生活を考察する手がかりを得ることが可能となった。 来年度は、骨病変に関する所見ばかりでなく、食性分析等をも併せて実施し、弥生時代の生活様相に関する所見をさらに得たいと考えている。
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