研究課題/領域番号 |
22520777
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
矢野 健一 立命館大学, 文学部, 教授 (10351313)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 縄文 / 農耕 / 弥生 / 近畿 |
研究概要 |
今年度は、近畿地方5地域の縄文時代晩期から弥生時代前期の遺跡集成および2万5千分の1の地形図および2万5千分の1土地条件図上に、遺跡の位置と範囲を記入し、遺跡分布図の作成を行った。遺跡集成と分布図作成に関しては、学生アルバイトを雇用した。近畿地方5地域のうち、京都盆地、大阪平野、阪神間の3地域については、遺跡集成と分布図作成をほぼ終了した。ただし、遺跡集成について、追加分を補足する必要がある。京都盆地については補足を完了しているが、他地域については補足を続行中である。 縄文時代晩期における農耕普及の実態を明らかにするため、2012年度に米原市教育委員会と立命館大学が調査した滋賀県米原市杉沢遺跡(縄文晩期)出土の植物遺体を分析した。年代測定と植物遺体同定については、(株)パレオ・ラボの協力を得た。この分析の資料準備に際して、一部アルバイトを雇用し、その費用についてのみ、本科研費を利用した。縄文時代の農耕普及の実態についての情報を得るため、日本文化財科学会第29回大会、関西縄文文化研究会和歌山例会、東名遺跡シンポジウム、関西縄文文化研究会奈良例会、関西縄文文化研究会第13回大会などに参加し、一部で研究発表を行った。 北部九州地方(福岡平野)については、共同研究者の宮地聡一郎が遺跡集成と遺跡分布図の作成を進めた。宮地と研究代表者矢野は年度末に研究会出席のための出張を利用して面会し、調査成果について議論した。年度末に宮地と矢野は京都とで研究成果を議論する会合を持つ予定であったが、宮地の長期出張が決まったため、京都での会合は中止した。宮地の成果については2013年度夏季に発表予定である。 近畿地方の土器編年については、矢野が検討を行ったが、未完成である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遺跡集成と遺跡分布図の作成については5地域の内3地域でほぼ終了した。奈良盆地と和歌山地域については遺跡集成はほぼ終了したが、遺跡分布図が追いついていない。これは雇用した学生アルバイトが予定通り勤務できなかったことが大きな原因である。また、順調にいけば、GISで分布図データを作成することも予定していたが、これについては実施できなかった。 滋賀県杉沢遺跡の発掘成果は、縄文晩期の農耕普及の様相を明らかにする上で、予想以上の成果をあげることができている。この点は、本科研費以外の費用で主に成果をあげたが、本研究の進行にとっても重要な価値を有する。 共同研究者の宮地聡一郎が担当する福岡平野については、順調に進んでいる。ただし、宮地が平成25年度に福島に長期出張することが決まったため、宮地がその準備に追われ、研究代表者の矢野と研究成果について十分な議論ができていない。 近畿地方の土器編年については、新たな編年観を矢野と宮地は大筋で共有できているのであるが、宮地の事情も災いし、直接、議論できた時間は多くない。この点については、矢野が地域ごとの詳細な編年案を作成できていないことにも理由がある。この点を早急に急ぐ必要がある。この点が完成すれば、石器組成等についてはすでに集成集も刊行されているので、スムーズに研究が進行するはずである。 以上のように、分布図作成と土器編年案の作成において遅れており、それ以外では予想以上の成果もあがっている。本研究に決定的に影響を及ぼすような遅れはないと判断できるので、「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
縄文晩期から弥生時代前期の近畿地方5地域の遺跡集成と分布図作成については、現状の成果を有効に活用し、公表できる段階に持って行くことを最優先する。そのために、遺跡集成のみで分布図が作成できていない奈良盆地と和歌山地域については、さしあたり作業を凍結し、他の3地域、すなわち京都盆地・大阪平野・阪神間について、細部を補足・修正し、公表できるような形になるよう、作業を行う。これについては学生アルバイトを雇用する。 杉沢遺跡の植物遺体分析については、別途、作業を行い、同定作業を進める。この同定作業の資料作成準備に、学生アルバイトを雇用する。 近畿地方の縄文晩期・弥生前期の土器編年案の詳細な検討は、矢野が8月をめどに終わらせたい。その検討に際しては、8月中に京都で宮地と会合を持ち、編年案を決定したい。 この編年案決定の後、編年案に沿った遺跡分布の変遷を示す分布図を京都盆地・大阪平野・阪神間の3地域で作成し、公表の準備を進める。石器組成の変化についても、合わせて検討する。時間的余裕があれば、和歌山地域、次いで奈良盆地の順に、同様の作業を行う。
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