本研究の目的は、日本のスキーリゾートが、スキー観光の衰退という時代背景のもとで、さらにはグローバル観光時代のもとで、どのようなプロセスで変化しているのかを、解明することである。 まず、スキーリゾートの最も重要な要素であるスキー場の動向を把握するために、索道関係の資料を収集してその変遷を分析した。その結果、日本におけるスキー場数は1990年代に約640か所でピークに達し、その後は閉鎖されるスキー場が増加して現在では500か所を下回っていること、閉鎖されたスキー場は小規模で東日本に多いこと、閉鎖には近接効果が負に作用していることなどが明らかになった。こうした状況下、インバウンド観光の進展によってスキーリゾートの変貌が著しい北海道倶知安町においてフィールドワークを実施した。そこでは、外国人向けのさまざまな施設、とくに宿泊施設が旧ペンション分譲地の空き地に「雨後の筍」のごとく立地していることを明らかにした。また、この宿泊施設はマンション型もしくは一戸建て型のアパートで自炊施設を備えたものであり、建物景観は機能重視の画一的なものが中心である点に特徴がある。スキー場内の諸施設においても、外国人、とくにオーストラリア人向けのさまざまなサービスが提供されていることが示された。最後に、オーストリア・アルプスにおける著名なスキーリゾートのひとつであるゼルデンにおいて、土地利用調査を実施した。その結果、過去約20年間に宿泊施設の規模拡大や質の向上がみられ、安定的な顧客の存在や消費嗜好の高級化と相まってスキーリゾートが発展している。同時に、主要道路沿いにはスポーツ店をはじめとする商業施設が集積していることも解明された。日本のスキーリゾートと異なるこうした諸点は、スキーヤーの行動パターンと密接に関係しているものと考えられる。
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