研究初年度における本年度においては、ドイツを中心とするヨーロッパにおける都市・農村間人口移動の実態とそれに関する研究動向を把握することに取り組んだ。ドイツにおいては、都市から農村への人口移動が顕著にみられるのみならず、多様な都市機能が農村地域へ移動していること、また農村への移住者により、商業活動などの非農業的機能が農村で存続できること、空き農家が改修されて良好な集落景観も造り出されていることが明らかとなった。また、従来と異なる都市・農村関係の枠組みで、こうした農村変化を把握しようとする試みが地理学を始めとして行われている。 こうしたドイツにおける農村人口変動の実態とそれへのアプローチを参考として、日本における農村人口の変動とその影響を評価する試みを始めた。最初に、東京大都市圏における人口動態を把握した。その結果、都心回帰による都心周辺における人口増加と周辺農山村における人口減少が明らかとなった。しかしながら、周辺農山村においても、那須や軽井沢、富士五湖周辺などリゾート地において人口増加がみられる地域が存在した。良好な農山村景観、リゾート化に伴う観光施設の存在、観光客としての現地における滞在経験、東京へのアクセスなどが人口流入の要因と考えられた。続いて、人口増加を示す農山村地域として長野県軽井沢町、減少を示す埼玉県秩父市を取り上げ、それぞれの地域において、都市からの流入者の生活行動とその地域への影響を把握することを試みた。
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