本年度は、遠隔地農村における人口流入とその影響を、北海道富良野周辺を取り上げ、大都市縁辺部農村と事例と比較しつつ評価することを試みた。 北海道富良野周辺地区には、ヨーロッパの田園に類似した景観が広がっており、こうした景観に惹きつけられて、観光客としてこの地を経験した都市住民が流入している。流入層には、定年退職後の高齢層ばかりでなく、途中退社による壮年層もみられ、東日本からのみならず西日本からも移住者がある。壮年層においては、ペンションや喫茶店、レストランなどを経営する例も多い。彼らの住居や店舗は、周辺の景観にマッチした、すなわちヨーロッパ風民家のデザインを踏襲しており、当地の田園景観の一部として、見るものをしてヨーロッパを強くイメージすることに貢献している。遠隔地とはいえ、旭川空港に比較的近く、交通アクセスが良好なことも、居住選択の一因になっているといえ、大都市縁辺部における場合と類似の要因が、人口流入を促進していると考えられた。 加えて、イギリス及び日本において、ルーラル・ジェントリフィケーションをテーマとする研究者と、ルーラル・ジェントリフィケーションの定義、イギリスと日本におけるその実態や差異について議論する機会をもった。そこでは、ルーラル・ジェントリフィケーションという概念を用いて、現代のヨーロッパ、そして日本の農村における人口流入とその影響を把握することが有効であることが明らかとなった。
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