研究課題/領域番号 |
22520792
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
松本 博之 奈良女子大学, 名誉教授 (70116979)
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研究分担者 |
相馬 秀廣 奈良女子大学, 文学部, 教授 (90196999)
内田 忠賢 奈良女子大学, 人間文化研究科, 教授 (00213439)
吉田 容子 奈良女子大学, 文学部, 准教授 (70265198)
帯谷 博明 奈良女子大学, 文学部, 准教授 (70366946)
高田 将志 奈良女子大学, 文学部, 教授 (60273827)
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キーワード | 地域景観 / 地域環境 / 紀伊半島 / グローバル化 / 保全 / 変容過程 |
研究概要 |
平成23年度は、まず、初年度に収集した各種空間情報データをGIS上にのせ、紀伊半島スケールの環境情報の重ね合わせが可能となるプラットホームを構築した。具体的には、年次の制約はあるものの、とくに植生や士地利用の変化を抽出することで、紀伊半島山間部の過疎化と地域環境の変化との関わり合いを解析可能な段階にまで到達することができた。これと併せて、自然環境や社会環境など各種地域環境情報の収集も初年度に引き続き実施し、上記の空間情報解析の基礎データとしてある程度組み込むことが可能な状態になった。 上記に加え、初年度末に実施した現地調査を受けて、新たな調査も展開させた。具体的には、大都市圏から離れた紀伊半島南部の遠隔地において、グローバル化の影響がどのようなかたちで人々の生活にあらわれてきているかを検証するため,生業基盤の脆弱な山間地域(奈良県吉野郡十津川村)、および経済基盤を観光業に依存する臨海部地域(和歌山県東牟婁郡白浜町・すさみ町・串本町)、和歌山市を対象に、両地域の高齢者からライフヒストリーを聴取し、比較的長いスパンを取って地域の変容を把握する試みを行った。さらに、前者においては、2011年9月に発生した豪雨災害の発生と生活環境の変化や、住民の災害・生活情報の共有に関するパイロット調査も実施した。一方後者においては、明治以降の海外出稼ぎおよび移民の実態とそれに基づく現在の国際交流活動の状況を調査し、研究成果,の地域社会への還元の意味で、串本町文化ホールでオーストラリア・木曜島海外出稼ぎに関する写真パネル展示会を行った。 紀伊半島中~南部では、平成23年9月初旬、台風12号の影響で甚大な土砂災害・水害が発生した。このため、当初予定していた調査の一部が、相当程度実施しにくい状況であったが、一方で、この台風12号による災害と社会・人文環境や自然環境の変化が、密接に関係している状況も観察された。したがって、それらの中で「グローバル化」と関係する現象の把握にも努める必要があることが、明らかになってきた。最終年度は、このようなこれまでの成果をうける形で、各検討課題の深化・整理を行い、最終成果の報告に向けた取組を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基礎的な情報収集や、GISによる解析プラットホームの構築、現地調査による各種データ収集など、当初計画に挙げた各項目毎に、ある程度の進捗状況がみられる点で、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年(平成23年)9月初旬の台風12号が、当該調査地域の社会・生活環境や自然環境に与えた影響は極めて大きなものであった。当初計画では、このような事態は想定していなかったが、今回の自然災害に関連した諸現象についても、できるだけ本研究に組み入れる形で、検討していきたいと考えている。また、グローバル化の一環として戦前の移民に基づく今日の海外交流活動についても検討を加えたい。
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