研究概要 |
本年度は,インドのITサービス業に関する基礎資料の収集に努めた。インド各州政府のなかでもカルナータカ州はITサービス業部門の外資系企業の誘致に積極的であり,当該州の政府機関から産業政策に関する資料収集を行った。また,ESCやNASSCOMはICT企業やインド経済の動向に関する資料が充実しており,これらの資料収集も行った。さらに,アメリカ合衆国におけるインド人技術者の動向がインドのITサービス業の発展と当該産業の集積地域の形成に大いに関係していることから,合衆国についての資料収集も合わせて行った。 今年度収集した資料の分析の結果,北川(2011)において論じたように,以下の点について明らかとなった。すなわち,インドのITサービス業は経済自由化以降,輸出指向型産業として急成長を遂げ,インド国内のみならずグローバルスケールにおいても重要な地位を確固たるものとしてきた。輸出を通じて成長したインドITサービス業は,インド全体の貿易構造にも影響を及ぼすまでの規模に成長している。 インドにおけるITサービス業の空間構造は6大集積地域形成に集約されるが,ITサービスの輸出を指向するICT企業の集積が進むことにより,各産業集積地の発展が促進されている。すなわち,ITサービス輸出額の多寡は当該の産業集積の規模を反映しているわけではなく,むしろ,各産業集積地のITサービス業の成長性に基づいている。ITサービス業の発展とそれによってもたらされる当該産業の空間構造の形成と再編に関して,大都市地域への立地指向性や良質な労働市場を背景として産業集積地域を形成するといった当該産業の有する特性だけでなく,ITサービスの輸出を促進させるインド政府による産業政策の影響も無視できないことが判明した。
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