研究概要 |
本年度は,インドにおけるITサービス業の集積過程を人的資源の動向から把握するために,横河電機など,インドへ進出している日本国内のITサービス業企業(以下,日系ITサービス業企業とする)において,現地での技術者採用の動向や採用方法,その経緯や課題などについて実態調査を行うことにつとめた。その結果,いくつかの企業において,ITサービス業技術者のライフヒストリーに注目して聞き取り調査を行うことが可能であった。こうしたライフヒストリー分析により,ローカルな人的資源の蓄積過程を企業レベルにおいて把握することが可能となった。なお,今年度収集した資料の分析の結果,以下の点について明らかとなった。すなわち,インドのITサービス業は経済自由化以降,輸出指向型産業として急成長を遂げ,インド国内のみならずグローバルスケールにおいても重要な地位を確固たるものとしてきた。輸出を通じて成長したインドITサービス業は,インド全体の貿易構造にも影響を及ぼすまでの規模に成長している。ITサービス業の発展とそれによってもたらされる当該産業の空間構造の形成と再編に関して,大都市地域への立地指向性や良質な労働市場を背景として産業集積地域を形成するといった当該産業の有する特性だけでなく,ITサービスの輸出を促進させるインド政府による産業政策の影響も無視できないことが判明した。
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