第1に,前年度に引き続き,三重県亀山市を事例に,工業労働者の流入の特性と居住特性を分析し,論文として公表した.その際に,工場従業員を対象にして複数回実施された大規模なアンケート調査を活用した.その結果,(1)シャープ立地直前の状況は,労働者の調達は採用時期と職種によって異なり,現業労働者は,1970年代頃までは広域から吸引していたが,近年は地元依存が主となっていた.(2)シャープ立地後の変化としては,大規模な雇用創出は転勤や,人材派遣業を通じて広域から調達された非正規雇用の増加が大半で,市内に定住意志を持つ者は少数であった.(3)社宅が未整備のため,行政の積極的な関与もあり主として単身者向けの民間賃貸住宅がスプロール的に多数建設された.(4)しかし定住意志を持つ者は家族向け物件が多く生活環境の良好な近隣都市に居住する傾向にあった.(5)リーマンショック後は「派遣切り」に伴う賃貸住宅の空室の大量発生などの問題が顕在化した.このように,雇用の流動化は,立地企業とローカルな地域との雇用や居住面での結びつきを希薄化していることを明らかにした. 第2に,同じく亀山市を対象として,現在の居住と就業状況を詳細に把握するために前年度実施した住民アンケート調査について,分析を進め,論文として発表する準備を進めた. 第3に,亀山市とは対照的に比較的古い企業城下町である宮崎県延岡市における雇用と居住の現状について,現地で資料収集や観察を実施した. これらを通して新興工業都市の一つである三重県亀山市の実態への理解を深めることができた.
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