研究概要 |
本研究の目的は,英国およびEUの地域政策に見られるリージョナリズム(地域主義)と日本の道州制を比較研究することによって,地域経済政策における「グローカル化」のプロセスを経済地理学の視座から解明することである。本年度の計画に沿って以下の研究を遂行した。 本年度6月には、韓国・ソウルで開催された第3回経済地理学世界大会において、本研究の中間成果として、東日本大震災が日本の地域経済や地域政策に与えた影響について発表した。同学会には、欧米英諸国だけでなく、アジア各国からも含め200名以上の研究者が参加していたことから、日本における人文地理学および地域政策研究の成果の海外発信に少なからず貢献したものと考える。また研究代表者が発表した分科会には、欧州各国の地域政策に関する発表が多く、本研究課題に関して具体的なレビューや助言が得られた。その成果は、本年度末に刊行した図書『産業立地と地域経済』の担当章に活用した。 次にEUおよび英国の地域政策,さらに日本の道州制に関する資料・文献を引き続き購入した。これらを分析した結果、英国における政権交代(労働党政権から保守党・自民党連合政権へ)によって地域政策が大きく変容しており、起業主義へシフトしていることが明らかになった。 日本の道州制に関しては、平成23年2月に沖縄県庁を訪問し、政府の地域主権政策および出先機関の権限委譲に関する聴き取り調査を行った。沖縄県は、その歴史的・地理的文脈から、独自の対応をとっており、単独州を目指す動きが強いことが明らかになった。3月には鹿児島県庁を訪問し、道州制に関する同県および九州地方知事会の対応に関して聴き取り調査を行ったところ、政府の地方組織の「丸ごと移管」を希望する九州地方知事会と、広域連合への一部移管を考えている政府・中央省庁の考え方の違いが明らかになった。
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