研究概要 |
研究内容:平成22年度は,熊本県域を事例として伝統的魚介類食と飲酒嗜好の地域的展開に関する調査を行った。具体的には,(1)伝統的魚介食を選定するため文献研究を行い,県栄養士会や郷土料理研究家の協力を得て73品目を選定した。これらの魚介類食の摂食頻度(どのくらいの頻度で食べるか)を明らかにするため,45市町村の世帯数で割り振った計656件のアンケート調査を学生の協力で実施し(調査期間は,平成22年11月~23年3月),全域にわたるデータを入手,市町村ごとの摂食頻度分布図73枚を作成した。(2)並行して飲酒嗜好の分布地域を明らかにするために,国税庁「酒のしおり」等統計分析,文献研究や酒造組合連合会,酒造会社での聞き取り調査を行って熊本県における酒の製造,販売,消費の概要を把握した。その後,45市町村の店数で割り振った90件の小売酒販店への聞き取りアンケート調査を実施し,飲酒嗜好地域図を作成した。 研究意義・重要性:従来,熊本県域における魚介類食,飲酒嗜好ともに,これらに関する具体的な研究が全くなされていないという点だけを取り上げても,その研究意義・重要性は大きいと言える。さらに,具体的に研究を進めた結果,魚介類を最もよく食べる地域が,沿岸ではなく,むしろ内陸山間地に集中していること(食材が限定された地域で近年の交通整備により魚介が持ち込まれ,高齢者がそれを好むためと考えられる),地域的に好まれる(産地限定の)すなわち,地域振興の核となりうる魚介類食がかなり多く見られることが判明した。また,飲酒嗜好を見ると,時代による嗜好の変化は大きいが,5地域((1)イモ焼酎,(2)甲類焼酎(3)コメ焼酎,(4)清酒・甲類,(5)雑穀他の焼酎)に分けられることが判明するなど,大きな成果を得ることができた。
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