研究課題/領域番号 |
22520801
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
中村 周作 宮崎大学, 教育文化学部, 教授 (00305062)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 伝統的魚介類食 / 摂食頻度 / 分布パターン / 飲酒嗜好 / 地域的展開 / 大分県 |
研究概要 |
本年度は,大分県域を対象として,伝統的魚介類食の摂食頻度に関する現地聴き取りアンケート調査と小売酒販店に対する地域的飲酒嗜好に関する聴き取りアンケート調査を学生の協力を得て行った。 調査内容を具体的に説明すると,まず,伝統的魚介類食を具体的に選定するための文献研究から始め,大分県および大分県漁協の担当者と相談することで,71品目を選定することができた。また,酒の消費に関する概要をつかむために,県酒造組合連合会と県小売酒販組合連合会の担当者に対する聴き取り調査を行った。 その後アンケート調査は,主に土・日に行った。第1回目が12月8・9日で県南部地方,第2回目が1月12・13日で県北部・東部地方,第3回目が1月26・27日で県央部地方,第4回目が2月16・17日で大分市他,第5回目が3月16・17日で日田地方を回り,学生が魚食調査を中村教員が小売酒販店調査をおもに担当した。その結果,伝統的魚介類食に関しては,計488件という膨大な住民アンケート調査データを得ることができた。また,小売酒販店に関しても県内全市町村を回り,計91件のデータを入手することができた。 これらのデータを現在分析中であり,伝統魚食の摂食頻度に関しては,論文化して学部紀要に投稿中である。さらに分析を進めた結果,大分県の伝統魚食の分布には計11のパターン,すなわち,①凡県域高摂食型,②凡県域中摂食型,③沿岸・内陸広域摂食型,④沿岸広域摂食型,⑤内陸広域摂食型,⑥県南部地域摂食型,⑦県北部・東部地域摂食型,⑧沿岸・内陸特定地域摂食型,⑨沿岸特定地域摂食型,⑩内陸特定地域摂食型,⑪極小地域摂食型があることが判明した。これらの成果について,本年度歴史地理学会にて発表し,さらに地理空間学会誌に投稿する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大分県域における飲酒嗜好と伝統的魚介類食の調査は2年計画で実施している。平成24年度は,その1年目に当たり,現地における酒と魚介類食の地域的嗜好に関する分布パターンを析出するための現地アンケート調査を行った。特に魚食調査488件は,全て飛び込みで回ったものであり,学生の努力の結晶とも言える大きな成果を得ることができた。それらの分析も順調に進んでおり,非常に興味深い結果が得られた。それらの論文化,学会発表の準備を鋭意進めている。 小売酒販店に対する地域的飲酒嗜好に関する調査は,中村教員がおもに担当したが,経営的に厳しい状況も合って,調査への協力をいただくことに四苦八苦した。何とか県全域91件のデータを得ることができたので,こちらも分析を進めて論文化する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
伝統的魚介類食に関しては,2本の論文を執筆する。学分紀要論文は,投稿済みであり,『地理空間』投稿論文は,5月中に完成させる。さらに,伝統魚食を育んできた大分県水産業に関する論文も執筆するべく現在資料収集中である。また,酒に関する論文も7月には仕上げる予定である。 論文執筆と並行して以下の現地調査を行う。①酒を作る側,すなわち主だった酒蔵に対する見学,聴き取り調査。②魚を獲る漁業および養殖業に対する見学,聴き取り調査。③魚を流通させる市場に対する見学,聴き取り調査。④おもな魚介類食に対する現地関係者による調理実演調査。⑤地域的なツーリズムメニューを開拓するための現地調査。 これらの調査で得られた情報等も文章化して,先に仕上げた論文とともに,3月末には『大分 -酒と肴の文化地理-』と題する専門書を刊行出版して科研費による研究成果を世に問う予定であり,地理学専門書を手広く扱っている出版社である原書房(東京都)より出版の確約を得ている。 これにより,平成22~25年度4年間の科研費による研究成果として,熊本県の酒と肴に関する論文1本と著書1冊(『熊本 酒と肴の文化地理 -文化を核とする地域おこしへの提言-』(熊本出版文化会館)と,大分県に関する論文4本と著書1冊を刊行することになる。
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