研究内容:平成25年度は,大分県域を事例として24年度に行った伝統的魚介類食に関する488件の聴き取りアンケート調査データの分析を行って,その成果を学会において口頭発表(平成25年5月,「歴史地理学会大会」一般発表)した。その上で,それらのデータ提示を目的としたに論文(「教育文化学部紀要」)と,分析の結果,県内の伝統的魚介類食が分布上4の大分類と11の小分類に分かれるなど,新たな知見を得て学会誌論文(「地理空間」)を著した。並行して県内84件の小売酒販店に対する聴き取りアンケート調査データの分析から,大分県域における地域的飲酒嗜好が7地域に分かれることなどを解明し,論文化(「教育文化学部紀要」)した。また,関連で伝統的魚介類食材の供給源である同県の水産業の実態についても論文化(「同紀要」)した。その後,伝統的魚介類食の調理実演観察調査3件,具体的な酒に関する地域的拠点である造り酒屋の観察・聴き取り調査2件を実施し,地域で失われつつある伝統飲食を含めて貴重な記録を得ることができた。さらに,地域の活性化を図るために他所から誘客して酒と魚介の拠点をめぐるツーリズムプランを構築するための地域調査を3カ所で実施した。それら一連の研究成果をまとめて著作化を行った(平成26年3月,『酒と肴の文化地理 -大分の地域食をめぐる旅』,原書房,A5版,179頁)。 研究意義・重要性:従来,大分県域における伝統的魚介類食,地域的飲酒嗜好ともに,具体的な研究がなく,当該分野に関する新たな多くの知見を得ることができたこと,さらに世界的視野でみても,このような視点で地域文化の保護・活用のあり方について究明した例はみとめられないことから,本研究は独自性がきわめて高く,その成果の意義・重要性も大きい。地域活性化の核として,長年培われてきた伝統文化の重要性を指摘できたことで地域にも寄与できたと考える。
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