研究概要 |
最終年度はインドとパキスタンの二カ国を調査。インド調査は、8月20日から9月7日まで実施。デリー大都市圏では、10ヶ所のデイリー・コロニー(Dairy Colony)のうちデリー南西部の2ヶ所のコロニーを除く8ヶ所と新たにデリー政府が建設したゴガ・コロニーでの観察・ヒアリングなどにおいても、搾乳業経営の基本型はグージャルの搾乳経営型が基本であることを確認した。次いで、ムンバイ大都市圏では、タベラ方式とコロニー方式との二種類の搾乳業が展開するが、いずれも搾乳業者はマハラシュトラ州外のイスラーム教徒により担われていることも確認した。さらにインド最大級の屠場を訪ね、場長と屠肉輸出に関する議論ができた。 パキスタン調査は、2月23日から3月14日まで,主にラホール大都市圏の二つの搾乳コロニーとラビー河畔のグージャルの搾乳業及び近郊農村の酪農業、さらに青刈り飼料市場、家畜市場及びクリーム抽出店などでの観察・ヒアリングを行った。10年前と比較すると特に搾乳業の規模拡大と肉牛経営の新たな展開が注目される。また、グローバル化への対応では、ラホール郊外の南部に巨大な家畜市場と屠場とがセットで設置され、アフガニスタンやイランまた遠くマレーシアなどイスラーム諸国への生獣・肉輸出が飛躍的に増大していることが知れた。カラーチ大都市圏では、カラーチ県政府が1990年代までに建設した5ヶ所の搾乳コロニーだけでなく、新たに政府が管轄する3ヶ所のコロニーが加わるなど搾乳業は年率10%近い成長をみるなど有望な投資対象産業となっている。そして、数例だがいわばアメリカのカリフォルニア州で展開するフィールドロッド方式の搾乳業経営が誕生していることが知れた。カラーチ大都市圏の都市搾乳業は、ミルクと肉の大生産地として経営の規模拡大と専門化・特化が進展している。近年、FAOは伝染性の獣疫に関する調査を実施している。
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