研究概要 |
本研究の目的は,東京大都市圏外縁部の栃木県さくら市の丘陵地帯に開発された「フィオーレ喜連川」(以下フィオーレ)と「びゅうフォレスト喜連川」(以下びゅうF)の2か所の温泉付住宅地を事例に,定住化と高齢化の実態及び諸問題を明らかにし,千葉県の事例と比較することにある。 フィオーレは,1992年にJR東日本と弘済建物によって開発・分譲された規模82haの林間・温泉付住宅地で,現在683戸が建築されており,うち定住は320戸である。びゅうFは,JR東日本が1999年から分譲を開始した計画規模39haの温泉付分譲住宅地で,現在,147戸の建物のうち70戸が定住である。2010年国勢調査結果によると,フィオーレの老年人口比は35%,びゅうFは同33%で,さくら市全体の老年人口比21%と比べて超高齢シニアタウン化が進んでいる。定住率はいずれも1/2以下で,未建築宅地も少なくない。 2012年8月のアンケート調査では,フィオーレで129世帯,びゅうFで39世帯から回答を得た。その結果,世帯主は「無職」が最も多く,フィオーレでは72%(平均71歳),びゅうFでは76%(同69歳)で,いわゆるリタイアメント・コミュニティを形成している。高齢定住者の多くは,主に1都3県と栃木県内から定年退職を機に,田舎暮らしを満喫することを目的に「アメニティ移動」をした住民達で,豊かな自然環境の中でゴルフやガーデニングなどの余暇が楽しめる温泉付住宅地であることが彼らの購入・転入の最大の理由であった。両住宅地ともに,住宅地では雑草・空き地管理などに,環境面では,駅への距離,列車の本数などに不満を抱いている。定住者の6~7割がここを「終の住処」と考えているが,公共交通の便に恵まれず,買物や通院なども不便で,老後の不安も感じていることなど,千葉県の事例と同様,超郊外の別荘型シニアタウン特有の課題が明らかになった。
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