本研究の目的は在ドイツ日本人派遣マネジャーの立地選好とネットワーク活動が企業の成功にどう関連しているかを明らかにすることであった。異文化職場でのシナジー創出が企業活動の成功につながるとして、独自の理論的フレームワークに基づき、立地選好、ネットワーク活動および、シナジー創出について調査を行った。異文化能力の高いマネジャーをハイブリッドマネジャー、それ以外を単に駐在マネジャーとして比較分析し、相違点を明らかにした。 これまでの調査で、インタビュー参加者計35名、アンケート回答者計103名(有効回答98)となり、それらのデータを使って分析を行った。 その結果、在ドイツ日本人マネジャーは人的資源、市場機会、住みやすい環境に対する立地選好が強かったが、駐在マネジャーがそれに加えて多国籍企業内のグローバルネットワークを重視しているのに対し、ハイブリッドマネジャーは現地サプライヤーや顧客との協力関係および職場の調和、つまり現地のネットワークを重視していることが分かった。ハイブリッドマネジャーは現地コミュニティへ統合することで異文化シナジー創出に成功している。ドイツ語能力も高く文化変容が進んでいるため、シナジーを生む戦略的意図を実践するスキルを獲得しており、周辺都市でも活躍している。一方、駐在マネジャーであっても、グローバル都市では国際経験の豊かな現地スタッフのサポートを得てグローバライザーとして働くことでシナジー創出していることが分かった。 また、在日外国人マネジャーの立地選好についての調査研究と比較してみると、在日ヨーロッパ人はハイブリッドマネジャー、一般駐在マネジャーのいずれも日本の市場環境における協力関係を選好しているが、ドイツにおける日本人マネジャーの中で、現地の顧客との協力関係を強く望んでいるのはハイブリッドマネジャーだけであるというのが、大きな相違点であった。
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